アクセント考

「強く」ではないアクセント記号つきの音符(チャイコフスキー「ひばりの歌」より)
「強く」ではないアクセント記号つきの音符(チャイコフスキー「ひばりの歌」より)

 ある日のレッスンでのこと。

 アクセント記号を指さしながら、「この記号がついている音符は、どんな風に弾く?」と尋ねると、Hちゃんが楽譜に「強く」と書き込みました。

 曲の最後に「ジャンッ!」と決めるところなので、この場合は「強く」で間違いではないのですが、アクセント記号の正確な意味は「その音を目立たせて」。

 アクセント記号がついていても強く弾かない場合もあるから、と説明し、書き直させようとしたのですが、Hちゃんはイヤイヤと首を振るばかり。

 どうやら、新しく覚えた「強」の漢字を使いたかったみたいです。

 新しく覚えた知識をすぐに活用する。お手本にしたい姿勢ですね。

 ということで、今回は、「強く」に「他の音より」と書き足すことで、良しとしました。

 

 考えてみれば、子どもの頃に弾く曲で、アクセント記号がついているのは、強く弾く部分ばかり。「アクセント記号=強く弾く記号」と思い込むのも、仕方がないですよね。

 

 そんなことがあった頃、テレビで、務川慧悟さんが友人の反田恭平さんにこんなアドバイスをしているシーンを見ました。二人ともピアニストです。

 「この瞬間に何か欲しい。弱くていいんだけど、この和声に何か欲しい。痛みみたいなものが…」

 特別な非和声音の弾き方についてのアドバイスなのですが、作曲家がアクセント記号をつけるときの意図は、正にこの言葉の通りなのではないかと思いました。

 

 アクセント記号は、作曲家が(ここに何か欲しい)と思った印。その表現方法は、他の音より鋭く弾いたり、弱く弾いたり、タイミングを少しずらしたり、音色のトーンを変えたり、いろいろ可能。

 そんな風に理解できました。

 

 生徒さんたちには、アクセント記号を見つけたら、その音を目立たせるためにどんな表現をするか、いろいろ試させていこうと思います。


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 2021年身辺雑記