2020年

♪ 音楽にまつわる身辺雑記 ♪


locoな歌声

Sちゃんがきれいな歌声で歌える「茶色の小瓶」
Sちゃんがきれいな歌声で歌える「茶色の小瓶」

 新しい曲に入ると、まず、参考演奏を聴き、次いで、メロディをドレミで歌います。メロディが、ちょっと声が出ないような高い音域の場合は、1オクターブ低くして歌います。

 

 そんな時、感心してしまうのが生徒のSちゃんの歌声。高いソやラの音も、loco〔楽譜通りの音の高さ〕で歌えるのです。

 音には、その音域によって持っている表情というものがあって、1オクターブ低くして歌うと、重たい音になってしまいます。それが、Sちゃんの場合は、その音本来の軽やかさで歌えるのです。

 

 これはいい!と思って、私もまねして歌ってみました。

 何とか高いラまで出ることには出るのですが、何回か歌っていると、のどに来ます。

 今年は新型コロナウイルスへの対策で換気扇を回し、窓を開けたままレッスンしているので、加湿器を「強」で稼働させ続けてもなかなか湿度が上がりません。

 のどに負担をかけない歌い方を習得する前に、乾燥も相まって、のどを痛めてしまいそうなので、無理に高音を出すのは諦めました。

 

 メロディを歌うときは、1オクターブ低い音しか出せなくても、気持ちはlocoな音で。Sちゃん以外の生徒さんたちには、そう伝えてから歌おうと思います。 


 ホーム  ブログの目次 

連弾のNEW練習方法

MuseScoreの「PDFをインポート」する画面 ※楽譜部分は加工しています
MuseScoreの「PDFをインポート」する画面 ※楽譜部分は加工しています

 生徒のTさんとピアノの連弾をすることになりました。

 曲は、成田為三さんの「浜辺の歌」。

 元の楽譜は、プリモ〔第1奏者〕とセコンド〔第2奏者〕のパートが一緒に書かれた4ページの総譜。お互い右端、左端の楽譜が見にくいので、パート譜を作ることにしました。

 

 楽譜作成に愛用しているのがフリーソフトのMuseScore。ソフトを開いたら、アップデートがあったので実行しました。

 アップデートしたMuseScoreを開きなおすと、ファイルのタブに「PDFのインポート」という項目ができています。もしかして、元の楽譜を読み込むだけで、簡単にパート譜ができるのでは?と思い、やってみました。

 読み込みに一部、エラーがあり、修復作業とコードネームの入力に少々時間を取られましたが、一から入力するよりも断然早いです。

 

 そうこうして手軽にパート譜ができたのですが、それに加えて、MuseScoreは演奏の再生もできます。

 PCのボリュームを最大にして、ピアノの横で相手のパートを再生。すると、一人でも、相手のパートに合わせた練習ができるのです。

 TさんにPCとの連弾をやってもらったら、「楽しい!」と喜んでもらえました。

 それから、いよいよ私との連弾。椅子の位置や、お互いの手がぶつかりそうになるところなど、生身の人間が並んで弾く課題を確認してスタート。

 お互い、もう少し個別に練習が必要ですね、というレベルでしたが、Tさんが「他にはどんな連弾の楽譜があるのですか?」と次の曲にまで乗り気になってくれたので、うれしかったです。

 

 PCなら、いつでも何回でも練習に付き合ってくれるし、再生テンポも変えられます。また、PCをお持ちでない方も、オーディオ・ファイルに変換できるので、スマホなどで再生して練習できます。

 本当に良い連弾の練習方法を見つけられたものだと、ほくほくしています。


 ホーム  ブログの目次 

7つのイメージ

レッスン室のカレンダー(部分)
レッスン室のカレンダー(部分)

 鍵盤の数を数えていた生徒のK君が、「ドからシまで7つずつだから、ドレミやABC〔コードネームで使います〕だけじゃなくて、月火水木金土日で呼んでもいいんじゃない?」と、おもしろいことを言ってきました。

 

 音名に曜日を当てはめるのなら、どの音を主音に持つかで、曜日ごとに調性のイメージをふくらませることができるかも、と心が躍りました。

 たとえば、月曜日はト長調〔ソが主音〕。週の始めの朝のすがすがしさ。

 金曜日はホ短調〔ミが主音〕。夜空の下で帰りの電車を待っている、ちょっとした疲れと安堵感。

 土曜日はヘ長調〔ファが主音〕。休日の昼下がりののんびりした感じ。

 なんてイメージしてみると楽しいです。

 

 わたしは、調性ごとに色のイメージを持っていたのですが、他にも、7にまつわる言葉からイメージができないかと考えてみました。

 

 7つと言えば、虹の色。虹の色はグラデーションだから、調性というより、ピアノでダンパー・ペダルを踏んだ時のハーモニーのにじんだ響きのイメージになりそうです。

 それから、春の七草、秋の七草。春の方は、7つとも菜っ葉なので、それぞれに異なるイメージを持つのは難しいですね。秋の方は、なじみ深い草花もあるので、こちらは行けそう。ナデシコはやわらかい変ホ長調、桔梗はキリッとしたト短調、ススキはあたたかい変ロ長調。あら?なぜかフラット系ばかり思い浮かびます。

 あとは、7つの海。太平洋は鮮やかなイ長調、南極海はぞくりと冷えたロ短調、北極海はキーンと凍った嬰ハ短調。こちらは、なぜかシャープ系が浮かびます。

 

 ドからシまで7つ。スケールやカデンツの練習に飽きたら、新しい音名を考えて、調性のイメージをふくらませてみてはいかがでしょう。練習がちょっとでも楽しくなったらいいですね。

 

 

※ ご参考までに、調性に関するブログです。

  → 「シャープとフラットの話」


 ホーム  ブログの目次 

表現としてのテンポ

「やさしい花」のつぼみが膨らんで咲くところ
「やさしい花」のつぼみが膨らんで咲くところ

 生徒のTさんがブルグミュラーの「やさしい花」を聞かせてくれました。

 左右の音のバランスも良いし、初め出てきた複前打音〔装飾音符の一種〕きれいに弾けています。

 ただ、デリカート〔繊細に〕な反面、生き生きととした感じが薄い印象。

 

 少しテンポが遅いのかな?と思い、そう指摘したところ、楽譜で指示されているテンポの何パーセントくらいにすれば良いですか?と訊かれました。

 「16分音符などの細かい音符がなくて、テンポも速くないから、80パーセントくらいかな?」と答えてから、ふと、前回のレッスンのことを思い出しました。

 

 Tさんが「この曲の始まりって、お花のつぼみが膨らんでいってパアッと咲いたような感じがしますよね」とおっしゃったので、「そう、そう」と、私も共感したのでした。

 そこで、今回はTさんのイメージを生かして、「つぼみを膨らませて咲かせるには、それだけのエネルギーが必要ですよね。そのエネルギーを音楽を前進させる力に変換して、生き生きととしたテンポで弾きましょう」、ということにしました。

 

 テンポアップの練習では、まず、作曲者が何を表現しようとしてそのテンポに設定したのか(史実でなくて自分なりのイメージ)を考える。そして、その表現にちょうどいいテンポを目指すのがお勧めです。

 楽譜に書いてあるからと、テンポの数字だけを追って、ただの指の運動にならないようにしましょうね。


 ホーム  ブログの目次 

音楽の授業

摂津小学校の音楽の教科書
摂津小学校の音楽の教科書

 一年生のHちゃんが、学校の音楽の授業で習ったことを披露してくれました。

 「ぶんぶんぶん」のメロディを弾いたり、自分たちで考えた振り付きで「かたつむり」を歌ったり。

 「わくわくキッチン」という曲は初めて聞きましたが、「とんとんとん」、「じゅうじゅうじゅう」など、リズミカルなオノマトペがたくさん出てきて楽しそう。

 

 レッスンの後、ウェブで検索してみると、教科書の出版社のサイトで、教科書に載っている曲の合唱が聴けるようになっていました。

 ピアノ伴奏の曲もありましたが、ドイツ民謡の「この山光る」は、チターなどの民族楽器を使ったアレンジになっており、学校の授業でも、いろいろな音楽に触れることができるのだなあ、と感心しました。

 

 音楽の授業と言えば、高校時代の先生のピアノは、人を引き付ける力がすごかったです。

 先生がピアノを弾き始めると、生徒たちのおしゃべりが潮が引くように止んでいって、イントロが終わると同時に一斉に息を吸って、クラスが一丸となって歌い始めるのです。

 大きな声より、魅力的な音楽の方が人を動かすのですね。

 

 Hちゃんは、学校が始まって、本当に楽しいみたいです。

 新型コロナウィルスのせいで、学校の日程も例年とは違っていますが、やっとクラスのみんなと一緒に歌を歌えるようになって良かったなあ、と思いました。


 ホーム  ブログの目次 

対面レッスン再開

教室の窓
教室の窓

 6月1日から対面レッスンを再開しました。

 

 教室のドアと窓を開放して、生徒さんも指導者もマスク着用。レッスン後は、手で触れるところを拭き取り清掃しています。

 第2週からは、勉強会で他の先生からうかがったお話も参考にして、レッスンの後は、手だけでなく顔も洗うようにし、拭き取り清掃は、一方通行(一度拭いた面には汚れが付着するから)にするようにしました。

  

 大阪府が出している『感染拡大予防にかかる標準的対策【学習塾・各種教室(スポーツ教室を除く)】』という文章に、「人と人が対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する」とあるので、スーパーのレジ状態でのレッスンも考えたのですが、やめました。

 レッスンでは、音の広がりや鋭さ、息づかい、といったものも伝えたいのですが、生徒さんが遮蔽されたところにいては、それらは感じにくいと思ったからです。

 

 ちょっと楽しいこともありました。

 一年生の子がレッスンの終わりに歌っていた歌のメロディを、次のレッスンに来た3年生の子が、エレクトーンに座るなり弾き始めたのです。外で待っていた時に、窓から歌声が聞こえていたのでしょうね。

 エアコンの効きは悪いですが、窓を開くと、人とつながる回路も開けるのだなあ、と思いました。

 

 今のところ、マスクが煩わしいくらいで、コロナ以前と同じようなレッスンができています。

 対新型コロナウイルスの薬やワクチンが一般に普及するまで、無事乗り越えられることを切に願っております。


 ホーム  ブログの目次 

ビデオ通話

エレクトーンの左側に置いたノートパソコンでビデオ通話しています
エレクトーンの左側に置いたノートパソコンでビデオ通話しています

 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が延長されたので、5月からは、動画のやり取りに加え、LINEのビデオ通話での簡易レッスンを始めました。

 

 初回は、宿題の曲の演奏、聴奏(耳で聴いて、メロディや和音をまねして弾く)、リズム打ちをしました。 

 その結果わかったのは、

①途切れたり雑音が入ったりするので、練習している曲の全体をチェックするのは難しい

②エレクトーンでたくさんの音が鳴っていると、低音がほとんど聞こえない上、足元は暗くてよく見えないので、ベース(足鍵盤)が正しく弾けているかわからない

③タイムラグがあるので一緒に弾いたり歌ったり、「さんはい」といった合図が出せない

ということです。

 

 2回目からは、練習中の曲に関する質問コーナー、聴奏、リズム打ち、と内容を変え、練習している曲に関しては、今まで通り動画を送ってもらいチェックすることにしました。

 

 大阪府は、5月21日に緊急事態宣言が解除されたので、6月からは通常レッスンを再開する予定です。

 通常レッスンが始まったら、生の演奏が聴けるし、一緒に歌ったりもできるので、うれしいです。

 でも、またマスク姿に戻るのかと思うと、お互いの表情がわかりづらいので、少々気が重いです。

 

 ビデオ通話は、音質が悪く、切り取られた画面の中でしかやり取りできませんでしたが、マスクなしの生徒さんの顔を見られたのが良かったなあ、と思います。


 ホーム  ブログの目次 

レクチャー動画づくり

手元の動画を撮るノートパソコンの体勢
手元の動画を撮るノートパソコンの体勢

 大阪府では、4月7日に緊急事態宣言が出されたので、以降、レッスンはお休みとしました。

 

 そこで始めたのが、動画のやり取り。生徒さんから宿題の演奏動画を送ってもらい、こちらからは、それに対するアドバイスの文章とレクチャー動画を送っています。

 

 ウェブでいろいろ検索しながら、動画の撮影、編集、You-tubeへのアップ・ロードなどを始めました。

 (うちのパソコン、こんな機能もあったんだ)とうれしくなることもありますが、初めてのことばかりなので、上手くいかないことが多いです。

 動画づくりで試行錯誤の日々ですが、生徒さんたちから送られてくる動画を見ると、みんな頑張って練習しているし、ありがたいことに、ご家族の方も相当協力してくださっていて、毎回、(次の動画づくりも頑張ろう!)とモチベーションが上がります。

 

 ままならない環境の中でも、生徒さんが、演奏する楽しさ、音楽に触れるよろこびを持ち続けられるよう、指導者として自分ができることを見つけていこう、と思います。


 ホーム  ブログの目次 

せきこんで弾く?

「劇場からのひびき」の中でも特にアジられているところ
「劇場からのひびき」の中でも特にアジられているところ

 シューマンの『ユーゲント・アルバム』という曲集は、速度標語や発想標語〔どのように演奏すべきか記した言葉〕にドイツ語が使われています。うちにある全音楽譜出版社の楽譜では、それらのドイツ語の標語にかっこ書きで日本語が書き添えてあります。

 

 新型コロナウイルスの感染症対策でレッスンを休みにしていた時のことです。

 『ユーゲント・アルバム』の「劇場からのひびき」という曲の冒頭には「Etwas agitiert(少しせきこんで)」とあるのですが、それを見た夫が「ゲホゲホしながら弾くの?」と訊いてきました。

 夫は、時節柄、「咳き込む」だと思ったようですが、正解は「急き込む」です。

 「せかされるとか、気がせくとかの『急き込む』だよ」と言うと、「あまり使わない言い回しだね」と返されて、それもそうだな、と思いました。

 

 他の楽譜でも「agitato(アジタート)」というイタリア語の発想標語がしばしば使われています。

 近頃では扇動することを「アジる」なんて言いますから、「せきこんで」より「アジられて」と言った方がわかりやすいかもしれませんね。

 

 音楽用語には、他にも、「快活に(con allegrezza)」、「おどけて(scherzando)」、「甚だしく(troppo)」など、ちょっと難しい言い回しが残っています。

 ちなみに、私の子どもの頃は、「少し強く(mezzo forte)」は「やや強く」、「中くらいの速さで(Moderato)」は「中庸の速さで」だったので、少しずつ音楽用語が載っているワークブックなどの文面も改められてはいるようです。

 

 新しい音楽用語を教えるときは、楽譜の中では見慣れていても、一般にはあまり使われない言葉があることに留意して、生徒さんにきちんと意味が伝わる言い回しに直さなければいけないな、と思いました。


 ホーム  ブログの目次 

1拍の長さと空間の広さ

4分の4拍子のミュゼット
4分の4拍子のミュゼット

4分の2拍子のミュゼット
4分の2拍子のミュゼット

 生徒のTさんが、バッハの「ミュゼット」を聴かせてくれました。アーティキュレーション〔音と音の区切り方やつなげ方〕も強弱も、とても丁寧に演奏できています。ただ、演奏中に、首が1小節に4回上下しているので、2拍子の曲なのに4拍子の8beatに感じられます。

 「2拍子の曲は、1小節に1回down&upするノリで弾けたら良いですね」とアドバイスしたところ、次のレッスンでは、軽快なテンポだけれど慌ただしくない優雅なミュゼットに仕上がっていました。

 同じ曲でも、4拍子の8beatで弾くと、ダンスのステップに注目している感じがする一方、2拍子で弾くと、広いダンスホール全体の光景が目に浮かぶようだな、と思いました。

 

 また、別の日のことです。

 指導法勉強会で、今度のJESフォーラムの最後に歌うアフリカ民謡を初見で歌おう、ということになりました。

 テンポの記載のない一段譜を見ながらみんなで歌い始めたところ、F先生が「こんな速さの曲だよ」と本来のゆったりとしたテンポを教えてくれました。そこで、もう一度歌い始めたところ、目の前の景色がザーッと広がって、広大なサバンナが見える気がしました。

 

 1拍の取り方が短いとズーム・アップ、長いとロング・ショット、というように、音楽で感じられる空間の広さが変わるのだなあ、と感じられる2つの出来事でした。


 ホーム  ブログの目次 

視覚と聴覚

WJSOのメロディ(ピンク)、内声(緑)、低音(紫)のパート
WJSOのメロディ(ピンク)、内声(緑)、低音(紫)のパート

 ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団(WJSO)のニューイヤーコンサートに行ってきました。

 ゴムまりのような風貌のヨハネス・ヴィルトナーさんが時に飛び跳ねながら指揮をし、楽団員の皆さんもいかにも上機嫌といった面持ちでお馴染みのウィンナ・ワルツやポルカを演奏するので、会場も陽気な気分にあふれ、とても楽しいコンサートでした。

 

 次の日にピアノを弾いていたら、うれしいことが。自分で弾いているメロディと内声と低音が、しっかり分かれて、立体的に聞こえるのです。

 メロディは第一バイオリンとフルート、内声は、第二バイオリンとヴィオラとホルン、低音はチェロとコントラバス、といった具合に、前日見たオーケストラの人たちの演奏している姿とともにピアノの音が聞こえてくるのです。

 ふだんは、ついついメロディにばかり意識が行ってしまうのですが、低音の支えの上に、内声の響きが広がって、そこをメロディが流れている感じで、どのパートの音も丁寧に弾けました。

 視覚に引っ張られるように、聴覚も意識を向ける先を分岐できるのだなあ、と面白く思いました。 

 

 また、p〔弱く〕からf〔強く〕に変わるところでは、ソロのオーボエと弦楽器群(第一バイオリンはお休み)だけの静かな演奏から、オーケストラ全体が一斉に動き出す躍動感が思い出され、いつもより気持ちよく場面転換できました。

 

 本物のオーケストラをイメージしながら弾くと、ピアノの演奏の腕も上がりそうですね。


 ホーム  ブログの目次