強拍 vs アクセント

チャイコフスキー『こどものアルバム』より「ワルツ」の冒頭
チャイコフスキー『こどものアルバム』より「ワルツ」の冒頭

 Tさんに「強拍とアクセントはどちらをより強く弾くのですか?」と質問されました。

 Tさんは、ちょうどチャイコフスキーの「ワルツ」(『こどものアルバム』収録)に取り掛かり始めたところで、その冒頭の強弱のつけ方で悩んだそう。

 スラーの終わりの音は弱く、と習ったのに強拍で、一方、アクセントの付いた音は強く弾くのに弱拍になっている。さて、どうしたものか、と。

 そこで、拍子とアクセントのお話をしました。

 

 まず、拍子の話。曲には2つのタイプがあります。1つ目は手拍子を打ちたくなるタイプ、もう一つは手拍子を打ったら少々お邪魔になってしまうタイプです。

 前者は、例えば「ラデツキー行進曲」。伴奏の拍子感とメロディの抑揚がそろっている曲です。この曲は、強拍と弱拍をしっかり意識すると、キビキビ前進するような演奏ができます。

 そして、後者が今回のケース。伴奏の拍子感とメロディの抑揚が2つの波のように独立しながら調和しています。伴奏の強拍と弱拍を控えめな強弱で表現し、拍子感をキープ。その小さな波に、2~5小節目のメロディを大きな波のように乗せます。

 

 次に、アクセントの話。アクセントの意味は「その音を目立たせて」なので、強く弾くだけではありません。聴いている人が次にこう来るだろうと予想しているよりも弱い音だったり、少し遅れて鳴らしたり、少し長く伸ばしたり、普通ではない印象をほんのり与えると良いと思います。

 たとえば、上の楽譜の3つ目のアクセント(青〇のところ)は、クレッシェンドの先に予想されるよりも小さな音で、かつ、少しだけ長く弾くと甘い響きになって素敵です。

 

 というわけで質問の答えは、強拍とアクセントは強く弾かないこともあるので、ケース・バイ・ケース、ということでした。


 ホーム  ブログの目次