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『ウィリアム・テル』序曲「スイス軍の行進」のトゥッティのところ
『ウィリアム・テル』序曲「スイス軍の行進」のトゥッティのところ

 何やら部屋の整理をしていた夫がしばらく眠らせていたCDを取り出してきて聴いていました。

 時々、「これ何の楽器?」と尋ねられるので答えていたのですが、他の楽器も鳴っているかもしれないと思い、IMSLP(国際楽譜図書館事業。著作権の切れた楽譜のインターネット上の図書館)でスコアをチェックしました。

 

 ムソルグスキー『展覧会の絵』の「キエフの大門」(オーケストラ編曲はラベル)のフィナーレ。

 「ジュワーン」と低く轟いているのは、銅鑼と思いましたが、Tamtam〔銅鑼〕だけでなく、Cloche〔鐘〕のところにも音符が!しかも、両パートとも「laisser vibrer」(響かせたままで)と書いてあります。「ジュワーン」と鳴らしたら、次は全休符だけど響かせっぱなしで、また次の「ジュワーン」が来る。そして、次の全休符も響かせっぱなしで、また「ジュワーン」。

 オーケストラのすべての楽器がffで鳴っているし、演奏会場がずっと揺れているのでしょうね。

 

 ロッシーニ『ウィリアム・テル』序曲の「スイス軍の行進」。

 ファンファーレの次のセクションの始まりは、弦楽器とクラリネットだけかと思いましたが、ファゴットとコルネットのところにも音符が。「うん、ほら、テンポが速いしピアニッシモ〔とても弱く〕だから」と言い訳しておきました。

 その先のトゥッティ〔全員で演奏する〕になったところのスコアを見た夫が、「こんな大勢の音がこの速さでそろうの?」と驚嘆していました。

 確かに、オーケストラの総譜〔すべてのパートが記されているスコア〕を見ると、たくさんの楽器が鳴っているのを実感できます。この人数で、あのひづめの音のような疾走感のあるフレーズがそろうなんて、まさに神業ですよね。

 

 「何の楽器?」の質問はなかったのですが、ついでに、サン=サーンス「死の舞踏」のスコアもチェック。

 イントロのバイオリンのソロ。音符の上に小さなマル印がついています。フラジオレットという倍音を鳴らす奏法の印です。

 言われてみれば、普通のバイオリンのつややかな音とは違って、どこか冷たい感じがします。「死」の不穏な感じが音色でも表現されているのですね。

 

 今回聴いたのはどの曲も、曲自体もすばらしいのですが、適材適所の楽器の用い方も秀逸だなあと感じ入りました。

 モスクワ放送交響楽団、ボストン・ポップス管弦楽団、シンシナティ・ポップス・オーケストラの演奏も抜群に良くて、楽しいひと時でした。


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