録音技術の申し子

ハワード・グッドールさんの本
ハワード・グッドールさんの本

 暑い、動きたくない・・・

 というわけで、冷房のお部屋で本とお友達な日々。

 先日は、ハワード・グッドールさんの『音楽史を変えた五つの発明』を読みました。

 

 その発明とは、

 <発明その1:五線を使った記譜法>

 発明の結果、

 ①即興で演奏されてその場限りで消えるか、演奏されたものを記憶で伝えていく以外なかった音楽が、時を超え、人や国、言語を超えて存在することが可能となった。

 ②作曲の専門家の出現を促し、音楽が目に見えるものとなったため、複雑な構造を持った大規模な曲が作られるようになった。また、対位法が生まれ、無数の新たな和声的試みが可能となった。

 

 <発明その2:オペラ>

 オペラは、怒りや興奮、熱狂といった人間の感情に、もっとも強く働きかける楽曲の形式。

 オペラは、聴衆を奮い立たせ、フランス革命の下地をつくったり、ベルギー革命のきっかけとなった。その後、オペラは、ナショナリズムを喚起しようとする勢力に利用され、チェコやイタリアの独立の機運を高める一方、ドイツにおけるユダヤ人排斥運動にもつながった。

 

 <発明その3:平均律>

 発明の結果、

 ①従来の四度、五度、八度のハーモニーをきれいに響かせることと、新しい三度や六度のハーモニーをきれいに響かせることを両立できるようになった。

 ②曲の途中で転調したり、異なる調に属する音を組み合わせて演奏できるようになった。

 

 <発明その4:ピアノ>

 ピアノは、音量を調節できる鍵盤楽器。

 ピアノは、非常に用途が広く、伴奏者として独唱者に親密に寄り添うこともできれば、フルオーケストラにも負けない音量で聴衆の関心をひきつけることもできる。クラシックやジャズ、ポピュラー音楽、何を演奏しても違和感がない。

 ピアノは、家庭の居間、店舗、学校、教会、伝導施設、酒場、クラブ、カフェなど、様々な場所に置かれ、多くの人にとって音楽の「入り口」となった。

 

 <発明その5:録音技術>

 音楽は、楽譜を書き上げる時間によく吟味したうえで世に送り出されていたが、録音は一瞬の出来事で、選別もなく、すべての音楽は「生きている博物館」の展示物になった。


 

 録音の章で、「カット・アンド・ペースト」で編集され、凍結保存された音楽ができた、と書かれていました。

 そこで思ったのが、エレクトーンのこと。

 他の楽器の音色をカット(録音)&ペースト(任意の場所での再生)するけど、演奏に合わせて、ものすごい速さで次々とペーストするから、むしろ、「カット・アンド・コラージュ」という感じですが。

 

 録音されたたくさんの音色を組み合わせ、加工し、強弱をつけたり、ビブラートさせたり、アーティキュレーション〔スタッカートやレガートなど〕の表現を変化させながら、演奏する。

 一つ一つの録音された音色こそ「凍結保存されたもの」かもしれませんが、それを使った演奏は、まさに「生きている音楽」。

 エレクトーンは、録音技術の申し子ともいうべき楽器なのだな、と思いました。


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