悪い癖をリセット

銚子駅のストリート・ピアノ
銚子駅のストリート・ピアノ

 大人の生徒のTさんがストリート・ピアノ〔公共の場所に設置された誰でも弾けるピアノ〕を初めて弾いた、と報告してくださいました。

 場所は銚子駅。周りに人がいなかったことに勇気を得て、デビューできたそうです。

 

 1曲目は、チャイコフスキーの「朝の祈り」。4声のバランスが難しい曲ですが、木でできた空間で、初めて自分でも満足のいく演奏ができたそう。

 続けて、暗譜していたレパートリー〔いつでも演奏できる曲〕を何曲か弾き、ショスタコーヴィチの「ガボット」の途中で続きが思い出せなくなって、弾き終えたそう。

 年末は忙しくて、ピアノに触ること自体一か月ぶりだったそうですが、なかなか上出来な演奏ができたようです。

 

 Tさんのお話の中で面白いなあ、と思ったのが、自分の演奏でどうしても直せなかった嫌な癖が、しばらく弾かないうちに自然に直っていた、ということ。

 

 そこで思い出したのが、先日の指導法研究会で聞いた、N先生の生徒さんのお悩み。

 その生徒さんは、指を動かすのに集中しすぎて、4分音符も2分音符も全て8分音符の長さになり、休符も抜けて、ただ音を羅列するように弾いてしまうそう。

 周りの先生方は、口々に「練習すればするほど下手になるパターンだから、ちょっとその曲から離れた方がいい」とおっしゃっていました。

 

 そもそも演奏とは、頭の中で音楽を再生しながら、それに合わせて体を動かし、自分が奏でた音を聴きながら、さらに動きを調節し、全体を整えていく、という活動。

 「指を動かすのに集中しすぎて」というのは、脳の中で、音楽を再生したり、自分が奏でた音を聴いたりする領域の働きが、体を動かす領域の働きに負けてしまっているのでしょうね。

 

 上達のためには、練習しかない!と思いがちですが、時には、脳の活動領域のバランスを整えるために、その曲から離れ、しばらく時間を置くことも必要なのだな、と思いました。


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